4月4日、いよいよ開幕した『イン・ザ・ハイツ』!観劇されたフリーライターの町田麻子さんから、観劇レポートが届きました!舞台写真と共に、ぜひチェック!
※画像をクリックすると拡大表示されます。どうぞご覧ください。


【町田麻子】
本作公演パンフレットの編集協力・執筆を担当したフリーライター。20年来ほぼ毎年NYへの観劇旅行を続けるブロードウェイ・ミュージカル好き。主にパンフ、演劇・美術媒体に執筆しており、2010年の『イン・ザ・ハイツ』来日公演のパンフ編集にも携わった。


* * * * * * * * *



日本人にもできた!

 「日本人にできるのか」。『イン・ザ・ハイツ』日本版製作のニュースを聞いて、作品を知る日本人ならば誰もが一度は思ったことだろう。観客をトランスに近い状態に導く強力な音楽と、コミュニティの絆を描いた胸を打つストーリーの普遍的価値は、誰もが認めるところ。だが何しろ、楽曲のほとんどは日本語に訳したらば確実にダサくなりそうな早口のラップであり、描かれているのはヒスパニックの人々の移民としての心模様なのだ。

 楽曲の一部が披露された製作発表で、一つ目の懸念はきれいさっぱり解消された。KREVAが手掛けた訳詞は、原詞に忠実でありながら、無条件でかっこいい。日本にヒップホップというジャンルを定着させてきたこれまでの功績も含め、本作の日本語上演における彼の役割は、もはや偉業のレベルと言えるだろう。そして二つ目についても、公演パンフレット制作にあたって稽古場取材を重ねる中で解消されていった。キャストの中に、“移民”あるいは“外国人”になろうとしていた者は一人として存在しない。松下優也はベニーを、Microはウスナビを。それぞれが、自身が演じる“人間”を捕えようと格闘していたのだ。


日本人だからできた…!

 そうなると残る懸念は、「日本人がやる必要があるのか」。初日の舞台を観終えた今、答えは明快だ。日本人がやることで、音楽とストーリーを母国語で味わうことができた。その喜びはもちろん絶大だが、それだけならばまあ、「ふーん」というところ。言語も人種も大幅に異なる日本人が取り組んだことで、作品が“再現”ではなく、必然的に“創造”の域に達した──それこそが、本番を観るまで分からなかった大きな成果だ。ステージには、本場ブロードウェイでもおそらくオリジナルキャストにしか出せなかったであろう、猛烈な熱さと勢いが溢れていた。

 オリジナルキャストには、原案・作詞・作曲のリン=マニュエル・ミランダも含まれる。学内公演からオフを経てオン・ブロードウェイに進出した作品を、「どうだ!これが俺のミュージカルだ!」と言わんばかりに意気揚々と押し出すのは、言ってみれば当然のこと。そんなオリジナルキャスト特有のものと思われた、本気の勝負を挑んでいるからこそのエネルギーを、我が日本版キャストも見せてくれたのだ。1幕冒頭の表題曲《IN THE HEIGHTS》が後半に差し掛かった頃、緊張が解けて楽曲と一体化した松下やMicroが見せた「どうだ!」の表情には、『イン・ザ・ハイツ』ファンとして胸が熱くなるものがあった。続く2時間半、ひたすらたたみかけ、駆け抜けたキャストに心からの拍手を贈りたい。

日本人にできるのか。日本人がやる必要があるのか。答えはもちろん、「ある」。ぜひ多くの日本人に体験してほしいと願ってやまない。

Broadway Musical IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ 公式ホームページ
Copyright(C) All Rights Reserved. ※ホームページ上のあらゆるコンテンツの無断使用、転載は固くお断りいたします。